こむら返りはなぜ起こるのか ― 電解質バランスの乱れが鍵
ふくらはぎの痙攣、いわゆる「こむら返り」は、多くの人が一度は経験する不快な症状です。特に夜中や運動中に突然襲ってくる激しい痛みは、日常生活の質を大きく下げてしまいます。こむら返りの原因はさまざまですが、その中心にあるのが 電解質バランス の乱れです。電解質とは、体内で電気的な働きを持つミネラルのことで、筋肉の収縮や神経伝達に欠かせません。
筋肉は、神経からの電気信号を受けて収縮・弛緩を繰り返しています。この仕組みが正常に働くためには、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどのミネラルが適切な濃度で存在している必要があります。しかし、汗を大量にかいたり、水分補給が不十分だったり、加齢によって吸収力が落ちたりすると、これらのミネラルが不足し、電解質バランスが崩れてしまいます。その結果、筋肉が過剰に収縮し、こむら返りが起こりやすくなるのです。
特に冬場は水分摂取量が減り、夏場は汗でミネラルが失われやすいため、一年を通して注意が必要です。まずは「こむら返りは電解質の乱れで起こる」という基本を押さえたうえで、次の章から具体的なミネラル補給のポイントを見ていきましょう。
マグネシウム ― 筋肉の緊張をゆるめる“リラックスミネラル”
こむら返り対策の中心となるのが マグネシウム です。マグネシウムは筋肉を「ゆるめる」働きを持ち、カルシウムが筋肉を「縮める」働きを持つのと対照的です。この二つのミネラルがバランスよく働くことで、筋肉はスムーズに収縮と弛緩を繰り返すことができます。
しかし現代人は、加工食品の増加や野菜不足により、慢性的なマグネシウム不足に陥りやすいと言われています。マグネシウムが不足すると、筋肉が過剰に緊張し、痙攣が起こりやすくなります。特に夜間のこむら返りは、マグネシウム不足が背景にあるケースが多いとされています。
マグネシウムを多く含む食品としては、以下が代表的です。
・玄米
・ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)
・海藻(わかめ、ひじき)
・大豆製品
・ほうれん草
また、マグネシウムは皮膚からも吸収できるため、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)を使った入浴も効果的です。入浴によって血行が良くなることも相まって、ふくらはぎの緊張が和らぎ、こむら返りの予防につながります。
カルシウム ― 筋肉の収縮をコントロールする“収縮ミネラル”
次に重要なのが カルシウム です。カルシウムは筋肉を「縮める」働きを持つミネラルで、マグネシウムとセットで働くことで筋肉の動きを調整しています。カルシウムが不足すると、筋肉が正常に収縮できず、逆に痙攣を引き起こすことがあります。
カルシウムは骨のイメージが強いですが、実は筋肉の動きにも深く関わっています。特に高齢者はカルシウムの吸収率が低下しやすく、こむら返りが起こりやすい傾向があります。さらに、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が悪くなるため、日光を適度に浴びることも大切です。
カルシウムを多く含む食品は以下の通りです。
・牛乳・ヨーグルト・チーズ
・小魚(しらす、いわし)
・小松菜
・豆腐
・切り干し大根
カルシウムとマグネシウムは「2:1」の比率で摂ると吸収が良いと言われています。例えば、乳製品とナッツ類を組み合わせるなど、食事の中で意識してみると良いでしょう。
カリウム ― 体内の水分調整を担う“バランスミネラル”
こむら返りの予防に欠かせない三つ目のミネラルが カリウム です。カリウムは細胞内の水分量を調整し、ナトリウムとのバランスを保つことで、筋肉や神経の働きを正常に保ちます。カリウムが不足すると、筋肉の興奮が高まり、痙攣が起こりやすくなります。
特に汗をかきやすい人、運動量が多い人、利尿剤を使用している人はカリウム不足に陥りやすいため注意が必要です。また、夏場は汗とともにカリウムが大量に失われるため、意識的な補給が欠かせません。
カリウムを多く含む食品は以下の通りです。
・バナナ
・じゃがいも
・アボカド
・トマト
・豆類
ただし、腎機能に問題がある人はカリウムの摂りすぎが危険な場合もあるため、医師の指導が必要です。健康な人であれば、食事から自然に摂取する分には問題ありません。
水分補給 ― ミネラルの働きを支える基本習慣
ミネラル補給と同じくらい重要なのが 水分補給 です。水分が不足すると血液が濃くなり、ミネラルの循環が悪くなります。その結果、筋肉に必要なミネラルが届きにくくなり、こむら返りが起こりやすくなります。
特に夜間のこむら返りは、寝ている間に軽い脱水状態になっていることが原因の一つです。寝る前にコップ一杯の水を飲むだけでも、こむら返りの頻度が減ることがあります。また、運動時には水だけでなく、ミネラルを含む飲料を選ぶことで、電解質バランスを保ちやすくなります。
・水分補給のポイントは以下の通りです。
・喉が渇く前に少しずつ飲む
・運動時はミネラル入りの飲料を選ぶ
・寝る前にコップ一杯の水を飲む
・冬でも意識的に水分を摂る
水分補給は、ミネラルの働きを最大限に引き出すための土台となる習慣です。
ミネラル補給の実践方法 ― 日常に取り入れるコツ
ここまで紹介した マグネシウム・カルシウム・カリウム をバランスよく摂るためには、特別な食事をする必要はありません。日常の食事に少し工夫を加えるだけで、こむら返りの予防につながります。
● 朝食
バナナ+ヨーグルト(カリウム+カルシウム)
玄米おにぎり(マグネシウム)
● 昼食
小松菜と豆腐の味噌汁(カルシウム+マグネシウム)
ひじきの煮物(マグネシウム)
● 夕食
アボカドサラダ(カリウム)
しらすおろし(カルシウム)
また、入浴時にエプソムソルトを使う、ナッツを間食に取り入れるなど、無理なく続けられる方法を選ぶことが大切です。
ミネラルと水分の力でこむら返りを予防
ふくらはぎの痙攣(こむら返り)は、単なる筋肉の問題ではなく、電解質バランス の乱れが大きく関わっています。
そのため、以下の5つのキーワードを意識することが予防の鍵になります。
・マグネシウム
・カルシウム
・カリウム
・電解質バランス
・水分補給
これらを日常生活に取り入れることで、こむら返りの頻度は大きく減らすことができます。
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